今回紹介する漫画『午後の光線』は、家庭環境に悩む淀井とグロテスクなものに性的興奮を覚える村瀬が出会い、心を通わせていくお話です。
淀井の一言がきっかけで、いじめのターゲットになってしまった村瀬。ある日、淀井がいじめを止めた事で二人は関係を深めていきますが、そこに幸せな未来はあるのでしょうか。
※ネタバレ要素を含みますので、ご注意ください。
漫画【午後の光線】作品情報
- 作者:南寝
- ジャンル:青年漫画
- 出版社:KADOKAWA
- レーベル:カドコミ
漫画『午後の光線』は、「燃えたい心」でアフタヌーン四季賞2023秋 四季大賞作品に選ばれた南寝先生の作品です。
大人気バラエティー番組・アメトーーク!のマンガ大好き芸人を始め、様々なメディアで紹介されており、幅広い読者から感動の声が寄せられています。
複雑な家庭環境に悩む淀井と、傷を見ると性的興奮を覚えてしまう村瀬が惹かれ合い、友情を超えた信頼関係で結ばれていく純愛物語。
主役の二人がとにかく純粋で、お互いを“助けたい”という想いが伝わり応援したくなります。
二人が迎えた結末は切ないものとなっていますが、たくさんの人に読んでいただきたい名作です!
午後の光線はどんな物語?
ここでは、『午後の光線』のあらすじを分かりやすく解説していきます!
二人の出会い
今から二週間前、挙動不審なクラスメイト・村瀬が蛙の解剖実験中に勃起しているのを見つけた淀井。
村瀬はその日から酷いいじめに遭うようになり、淀井は責任を感じていました。
それからしばらく経ち、美化委員として活動をし始めた二人は徐々に友情を深めていきます。
ある日、いつも彼がバナナ一本で空腹をしのいでいる事に気付いた村瀬は、明日から淀井の分も弁当を持って来ると約束しました。
しかし、いじめの首謀者から弁当をひっくり返されたせいで台無しに。
激高した淀井は相手に椅子をぶつけ怪我をさせる騒ぎを起こし、一週間の停学処分となります。
秘密の関係
村瀬へのいじめはなくなり、平穏な学校生活が始まります。
あの一件で親交を深めた二人は親しくなり、夏休みのある日、淀井は村瀬の家に行く事に。
村瀬の両親は出かけており、淀井は二人きりの部屋の中で不思議なアルバムを見つけます。
アルバムの内容から村瀬が“傷”に性的興奮を覚えると気付き、ある提案をした淀井。
村瀬がおかしな性癖に悩み心療内科にかかっている事を知った淀井は、気持ちいい事をして上書きしようと言い出して…。
午後の光線を読んだ感想(ネタバレ注意)
似た者同士
正反対の二人が出会い、絆を深めていく展開に引き込まれました!
一人目の主人公・淀井は飄々としたクールな少年ですが、正義感が強く優しい男の子。
父親を早くに亡くした彼は母親が暴力的な男と交際している事に悩んでいましたが、誰にも言い出せずにいます。
対照的に村瀬は父親が内科医で、母親も子供の事を第一に考える温かい家庭に育った少年。
二人の共通点は自分の事よりも他人を思い遣る事だと感じましたが、そんな二人が出会い心を通わせ始めたのも運命的だと思いました!
淀井の優しさ
淀井の一言がきっかけで酷いいじめに遭い始めたものの、いじめっ子の親は至極まとも。
一週間の停学処分を食らったのは痛いですが、この事がきっかけで二人の友情が益々深まる展開となり良かったと思います。
しかし仲が深まるにつれ、村瀬が実はグロテスクなものに性的興奮を覚えてしまう異常者である事や、淀井に想いを寄せている事も明らかに。
自分が淀井の立場だったら引いてしまいそうですが、決して馬鹿にする事なく、村瀬を救いたい一心で解決法を探る姿に心打たれました!
二人の温度差
二人は性的なものへの好奇心から深い仲となったように伺えますが、二人の“好き”には隔たりがある事が発覚。
淀井にもっと“自分を大切にして欲しい”と訴える村瀬の泣き顔が切なくて、彼の事が本当に好きな気持ちが伝わり心痛みました。
すれ違いを経験しながらも、母親の恋人・哲郎との関係が拗れ苦しむ淀井を救おうとする村瀬の姿に涙…。
家に帰れない淀井を励まそうと寄り添い続けた村瀬ですが、誰もいない山の中に抜けた乳歯を埋めるシーンは二人だけの秘密のようでドキドキしました!
二人の結末
最終的に淀井の家庭問題も解決し、物語は佳境に。
晴れて相思相愛となった二人が海辺で互いの気持ちを伝え合う姿がとても綺麗で、こんな幸せがずっと続いて欲しいと願ってしまいます。
しかし最後の最後で大どんでん返しが待っており、予想を裏切る展開に。
切なすぎるラストに涙なしでは読めず、登場人物たちの幸せを願わずにはいられませんでした!
午後の光線の見どころ
少年たちの危うさ
いじめのきっかけを作ってしまった罪悪感から関わる事となりますが、徐々に惹かれ合う二人がとにかく純粋で引き込まれました。
対照的な二人がお互いを助けたい一心で行動する姿は危ういものがありますが、損得勘定なく動くところが素晴らしいですね。
少年特有の危うさが作品の魅力をより一層引き立てていると思います。
優しい世界
作品の登場人物は誰一人悪人がおらず、いじめっ子をはじめ母親の交際相手までもが“優しさ”を持ち合わせている事が分かります。
当時は仲違いしていても、最終話ではそれぞれの想いが伝わり何とも言えない気持ちに。
あまり深く話してしまうと重大なネタバレになってしまうので言えませんが、最後まで読むと全ての登場人物が素晴らしく、皆がお互いを大切に想っていた事が分かり切ない気持ちになりました。
午後の光線を読んで特に印象的だったところ
よくある正義感の強い少年がいじめっ子を救う物語かと考えていましたが、全く違う展開に衝撃を受けました!
少年たちの優しさや好奇心を通し、傷付いた主人公たちが救われていく姿に感動してしまいます。
特に、終盤の浜辺で“大好き”だと気持ちを伝え合うシーンでは読んでいるこちらまで笑顔に。
この幸せがずっと続けばいいのに…と深く願ってしまう印象的なシーンとなっています!
午後の光線の最終回・結末について
村瀬の悩みが解決され、淀井と相思相愛になりそれぞれが幸せになるのかと思いきや…。
あまりにも衝撃的な結末に言葉を失ってしまいました。
物語は淀井と村瀬が中心で進んでいきましたが、ラストでは周囲の人々の優しさも伝わり涙なしでは読めない展開となっています。
優しい世界だったからこそ、みんなで幸せになって欲しかったです。
それぞれの傷が癒える事はないと思いますが、皆の想いがあの人に届いて欲しいと願わずにいられませんでした。
まとめ
『午後の光線』について紹介しました。
いじめを止めた事をきっかけで、友情を深めていった淀井と村瀬。
やがてお互いの痛みを晴らすように、二人は友情を超えた絆で結ばれていきます。